コラム

預貯金等の金銭債権の相続(2021/11/18)

相続で話し合いがまとまらず未分割であるケースで、依頼者と対峙する相手方にお会いした際、次のような話が出ました。

「預貯金等の金銭債権については、各相続人が法定相続分の権利を持っており、法定相続分で相続できるはずで、何故相続分に見合う額を分けないのかおかしいのではないか。」とおっしゃられました。

これに対し、私は、「預貯金等の金銭債権については、従来、各相続人が直接的に法定相続分を相続できるという考え方と、もう一方で相続人同士での分割対象財産として合意によって決めるものとの両方の見解があり、近年、預貯金については、遺産分割の対象とされ、法定相続分での相続を直接請求できることはできなくなっています。」と申し上げました。

これは、平成28年の最高裁の判決で預貯金債権については、相続開始とともに当然に相続分に応じて分割されるものでなく、他の可分債権と異なり、遺産分割の対象となる とされたことによります。

これ以降は、相続人が直接的に金融機関に自らの相続分を請求することが認められなくなりました。

ただし、この判例では預貯金債権に対してだけですので、預貯金債権以外の金銭債権として、例えば売掛金、貸付金等がありますが、これらに関しては相続人の間での合意によらない場合には各相続人による相続分での相続が可能となっています。

土地の譲渡で取得費が不明な場合(2021/10/16)

個人が不動産を売却した場合、売却額がその不動産の取得費や譲渡費用の合計額を上回ったときには、その差の利益に対して、一般的に20%(所得税15%,住民税5%)の税金が掛かります。

また、その不動産の取得費が不明の場合、あるいは先祖代々相続して売却額の5%未満である場合でも、売却額の5%を取得費とすることができます。

ただし、売却額の5%よりは高い購入金額であったが、売買契約書や領収書がなく証明するものがないというケースもあります。

このような場合には売却額の5%を取得費として用いますが、実際に5%超の金額で取得していることが明らかな場合であれば、何とかそれを疎明する材料を集めて、これ以上で取得しているという金額を見出し、その金額を取得費として申告することが可能か検討してみます。

その材料として考えられるのが、まず不動産の登記簿で担保が設定されていないかです。

もし、担保が設定されていれば、その設定額以上の金額で取得していると推定されます。

次に何らかの記録や書面です。不動産の購入金額やその資金繰りに関することが日記帳やメモなど残されていないか調べてみることで、もし、何らかの記載があれば実際にあったことと推定されます、また、購入当時の覚えとして、幾らで購入したと聞いた、あるいは話していたというようなことがあれば、それらの覚えを文章化してみることで具体的になります。事実であればそれに勝るものはなく、実際にあったことだからこそ書き表せることができます。

これらの材料を揃え、最低この金額以上で取得したということが示せるようであれば、その金額を用いて申告されても、税務上、否認されることはないのではないかと思います。

亡くなる半年前に運よく遺言書が作成できたこと(2021/07/10)

一昨年の春、いとこの財産管理に関して、Cさんがご相談に来られました。

そのいとこの方は10年前にご主人が亡くなり、子供もなく相続人がいない方で、唯一の親族が相談者とでした。そのいとこの財産は預貯金と駐車場とご自宅です。

遺言がなければ、これらの財産は国に移管されてしまいます。

このような場合、家庭裁判所が財産管理人を選任して財産の調査や債権者や債権の有無を調べ、特別縁故者がいれば一部の財産が与えられ、残りの財産は国庫に入ってしまいます。

Cさんには特別縁故者として財産の一部与えられる可能性があるだけです。

相続人がいない場合は、ぜひ遺言することで、身近にいる気に入った方に財産を譲るべきです。でなければ家庭裁判所や国の手を煩わせるだけです。

というわけで相談者の財産管理も大事だが、いち早く遺言書を書いてもらうべきですよと私の方で申し上げていたようだ。

今回、そのいとこさんが一昨年末に亡くなったとのこと、私共との相談がきっかけで運良く自筆証書遺言を作成してもらっていたそうだ。

Cさんはこちらに相談に来なければ遺言書も作成することもなかったとのこと。

タイミング良く相談に来られたこと、又遺言書の作成を相談者に勧めたこと、その両方が相まって結果的にCさんが全財産を受け取り事ができました。

もし、そのどちらかでも欠けていたならば、今頃、国への移管の手続きが始まっていたことでしょう。

遺言書の法務局の保管制度の利用を行う(2020/07/18)

 先日、住所地の管轄の法務局へ自筆証書遺言の作成及び保管に行きました。

 遺言の内容は、自宅マンションは妻へ、金融資産は家族へ法定相続分で、その他は妻とでという内容です。本文は、「別紙1は家内に、別紙2は法定相続分」と自書し、財産目録として、別紙1に不動産の謄本の写し、別紙2に金融資産を手書きし、本文、別紙1、別紙2の3枚セットとしました。

 法務局で不動産の謄本を申請し、法務局の向いのスーパーでコピーを取り、そのコピーに自署押印して遺言書を完成させ、予約した3時に遺言書保管官である法務局の方にお会いし、用意した申請書、遺言書、本籍地入りの住民票、身分証明書を見ていただきました。

 遺言書の本文で1、2、3と番号を振っていましたが、その番号の左端が文書の余白部分に掛かりそうだ(余白部分が左側は2cm、上と右側は0.5cm、下は1cmとなっていてそこには記載してはいけないことになっている)、との指摘を受け、さらに不動産の登記簿謄本をそのままA4でコピーを取っていた為、こちらは完全に余白部分に掛かっているのでコピーの取り直しとなりました。もし、不動産の謄本のコピーを取るのに縮小ができなければ、謄本の表題部の『一棟の建物の表示及び敷地権の木亭である土地の表示』と『専有部分の建物表示』を分けて2枚のコピーにすればよいと指示を受け、再度、コピーを取り直しました。

 コピーを取り終えて改めて書類を揃え、別の係員も同席して、本文の番号が余白に掛からないとの判断をいただき、申請の受付けを済ませました。

 遺言書の画像処理を行ったうえで受け付けた証明書を発行するために、「30分ほど待ってほしい」と言われ、30分ほど待って戻ってきましたが、「もう10分ほど待ってほしい」とのこと、さらに待たされて、結果、1時間近く待たされました。

 保管制度がスタートして数日後のことなので法務局もまだ慣れない部分があるのでしょう。無事終了し「保管証」を受理しました。

借入金は配偶者が相続すればよいという間違い(2020/04/09)

 相続対策として、借入れして賃貸マンションやアパートを建て(又は購入する)場合があります。その対策が実って節税ができ、配偶者と子が相続する場合に、借入金の付いた物件を配偶者の2次相続対策として、配偶者が相続すべきだと考える方が非常に多くいらっしゃいます。

でも、これは誤りです。基本的に配偶者が相続しようが、子が相続しようが変わりはありません。なぜ、配偶者が相続すれば、将来の配偶者に係る相続税対策として、節税効果があるとお思いなのでしょうか?

その原因は借入金です。よく相続税対策として借金すべきと言われます。借入金があれば節税につながるというのは実は間違いです。正しくは借入してその資金でもって購入したものの評価が低くなることで節税につながるということです。マンションやアパートであれば建築費に対し、おおよそ相続税での評価額が建築費の1/3程度に下がるためです。それは借入金であろうと手持ちの預貯金で建築しようと同じです。

そして、建築後相続が起こり、その下がった評価でもって配偶者や子が相続しますので、配偶者が相続してもさらに評価が下がるわけではありません。

例えば、4億円の財産をお持ちの場合、1.5億円でマンションを建築すれば、一方の建物の評価額は0.5億円に下がります。財産4億円+マンション0.5億円-借入金1.5億円=3億円で相続されます。その3億円を配偶者と子が相続しますが、仮に配偶者が半分の1.5億円を相続するとして、その財産の内容がマンション0.5億円、その他財産2.5億円、借入金1.5億円であっても、マンションを含まずその他財産だけで1,5億円であっても、引き継いだ財産は純財産(財産-債務)として1.5億円ですので同じです。すなわち、マンションを建てて評価が下がりその下がった評価額をもとに分割していますので、そこからは借入金の付いたマンションを配偶者が相続しようがしまいが同じです。違いは配偶者にマンションの家賃収入が入るかどうかの違いだけです。

あくまでも相続税の節税効果は一回きりです。それ以後の効果はないということです。

配偶者居住権が2次相続で評価されないことが確定(2019/12/27)

 配偶者居住権は、令和2年4月から民法改正により施行されます。生存配偶者の自宅に住む権利を終身(一定年限も可)にわたって保証し、相続での財産的価値が所有権よりも低い評価で算定されることにより、配偶者により多くの金融資産等の財産を与えるものとして誕生します。

 その配偶者居住権は、配偶者が被相続人の所有する建物に居住していた時に、遺言や遺産分割協議、あるいは家庭裁判所の審判手続きにより取得することができます。この配偶者居住権を配偶者が取得して、その後その配偶者が亡くなったとき(2次相続)に、その2次相続税に係る申告において、その配偶者居住権がどのように評価されるのか、(多くは配偶者の死亡により配偶者居住権が消滅し評価されないのではという意見が大勢でしったが・・・無論、私も)、今夏の国税の通達改正により、死亡により配偶者居住権が消滅した場合には評価されないと発表されました。

 その結果、相続税の申告上、例えば、配偶者と子が相続人であれば、配偶者に自宅の土地建物に係る配偶者居住権を相続させ、子に自宅の土地建物の所有権を相続させると、将来、その配偶者が亡くなった際の相続税では配偶者の財産であるはずの配偶者居住権に係る土地や建物部分の評価がゼロとなり有利であることから、そのような分割を勧めることが多くなると思われます。税理士であればそのケースを想定して説明をしておかないと説明責任を問われかねなくなります。

ちなみに、配偶者居住権は、配偶者の年齢が若いほど、あるいは、建物が新しいほど、配偶者居住権の評価が高くなる可能性があります。

 ただし、この配偶者居住権を利用する場合に、注意しないといけないこととして次のような点があります。

①配偶者居住権はその建物を被相続人が単独で所有しているか、もしくは、配偶者との共有でなければその権利を得ることができないこととなっています。例えば子が共有者であれば事前に建物の共有持ち分を整理しておくことが必要です。
②すでに配偶者に自宅の土地建物を相続させる遺言をしている場合には、配偶者居住権に書き換える必要があります。
③相続税の小規模宅地の評価減の制度で配偶者居住権に係る敷地について、同居している子がいれば、配偶者の配偶者居住権に基づく敷地利用権と子のその敷地に対する所有権の両方に適用されますが、子が同居でなければ、小規模宅地の減額額が少なくなり、税額が増えてしまう可能性があります。

 今後、配偶者がいる場合の遺産分割において、相続税の申告上、2次相続を考慮して配偶者居住権を選択するかどうかのアドバイスが税理士に求められることになります。

「遺言があることの確認」というタイトルの書籍の出版(2019/08/24)

画像:配偶者居住権が2次相続で評価されないことが確定

 この度、TKC出版から「「遺言があること」の確認」というタイトルで書籍が出版されました。これは、私が元居た税理士法人FP総合研究所の元所長、山本和義(資産税関係で著名な税理士)が音頭をとって、FP総合研究所のOBが集まり、共著で作製したものです。

 この書籍の内容は、平成30年に改正された民法から、自筆証書遺言の方式緩和や法務局での保管制度、配偶者居住権の創設や夫婦間の居住用不動産の持戻し免除、遺留分請求の見直しや特別寄与分の創設など相続に関係するものを取りあげ、その改正の内容に、相続税は無論のこと、税理士として常日頃の業務を通して相続に関して必要な情報や手続きを織り込んだものです。

 私の担当した章では、遺言を補完する役割を担う家族信託と夫婦が作成する遺言書について触れさしていただいています。ぜひ、皆様もご一読ください。

配偶者居住権は2次相続に係る相続税対策となるか?(2019/07/02)

 配偶者居住権は、民法の改正により令和2年4月1日以降の相続からスタートします。

一方配偶者の相続後、他方配偶者が遺言の指定又は遺産分割協議により、終生自宅に住み続けられる権利です。この改正により、遺産分割協議において、配偶者がより金融資産を相続することができるものと期待されています。

この配偶者居住権の評価は自宅不動産の時価から、配偶者の平均余命(存続年数)に応じて複利現価による計算がされた価額を差し引いた残額とされています。

法務省のホームページに掲載されている事例では、妻75歳の時の相続で自宅不動産の評価が4,200万円(建物評価0円)で、配偶者居住権に基づく敷地利用権が1,500万円、配偶者居住権が設定された土地の所有権の評価が2700万円となっています。これは配偶者居住権の設定された土地の評価が存続年数15年の年3%での複利現価率0.642を乗じた2,700万円となり、土地の時価4,200万円との差額1,500万円が配偶者居住権に基づく敷地利用権の評価となります。

ところで、この配偶者居住権ですが、この権利は配偶者の生存中の権利で、配偶者が亡くなれば、この権利は消滅し、ゼロとなります。つまり、配偶者が相続した際の評価は1,500万円でも、配偶者の亡くなったときの相続時の評価はゼロということです。

配偶者が自宅不動産を所有権で相続すれば、そのまま配偶者の相続時の財産となりますが、配偶者居住権であれば、配偶者の相続時の評価は必ずゼロとなりますので、所有権でなしに居住権を相続した方が評価が下がり、相続税対策につながります。端的に言えば、節税策として、配偶者居住権で相続しましょうとなるわけです。

配偶者が持った配偶者居住権の評価については、近々に明らかになると思われますが、節税を意識して配偶者居住権を意図的に利用したとしても、民法上で制度化されたものであり、また制度が普及すれば配偶者の生活の安定化につながるものであるため、やはりゼロとしての評価が認められるものと思われます。

2次相続税を考慮した配偶者の自宅敷地の相続(2019/04/26)

 平成27年の税制改正で相続税の基礎控除額が引き下げられたことから、相続税の申告数が増加しています。その中で、被相続人の所有する自宅と金融資産だけで申告する例が多くなっています。

それらの例のうち、自宅の敷地について、小規模宅地の減額の適用を受けることにより、相続税が結果的に発生しない場合も結構あります。この小規模宅地の減額の制度は、被相続人の居住していた敷地を配偶者が相続したり、又は同居の相続人等が居住し続ける場合に330㎡までの敷地について、80%減額されるものです。

同居されている相続人がいない場合、配偶者が自宅の敷地を全部相続して、この軽減の適用を受け、その結果、財産額が基礎控除以下になることで相続税が発生しないケースです。

結果としてこれでもよいのですが、2次相続に係る相続税(将来の配偶者が死亡した際に課税される相続税)を考慮しますと、基礎控除額を下回る範囲で他の相続人(例えば、非同居の子)に自宅の敷地の一部を相続させることで、2次相続に対する節税対策につなげることができます。

例えば、相続人が配偶者と子2人とし、被相続人の財産は、自宅敷地の評価額が4,000万円、預貯金が2,000万円とします。(基礎控除額は4,800万円(3,000万円+600万円×3人)です。

配偶者が自宅の敷地全部を相続すれば、その評価額は、4,000万円×20%で800万円となり、財産の合計額も自宅敷地800万円と預貯金2,000万円で合わせて2,800万円で、基礎控除額を下回ります。

一方、配偶者が自宅敷地の1/2を相続して、残り1/2を子に相続させても、配偶者の敷地の評価額は、4,000万円×1/2×20%の400万円で、子の自宅敷地の評価額4,000万円×1/2=2,000万円に預貯金2,000万円を合わせても合計4,400万円で基礎控除額を下回ります。こちらの方が配偶者の自宅敷地の持分は半分に減り、評価額も4,000万円から2,000万円に下がり、2次相続のことを考えますと有利です。

最近、このような配偶者の自宅敷地の相続する持分を調整して、なお相続税が掛からないという、2次相続対策を考慮した相続のパターンがしばしば行われています。

相続税の申告が必要かどうか?(2019/03/31)

 相続が起こられて、時々、相続税の申告が必要ではないかということで尋ねに来られるケースがあります。

その際は、相続税の申告が必要かどうかを判断するために、まず、お持ちのご自宅等の不動産について、幾らぐらいの価額か尋ね、それが不明であれば、不動産の所在や面積等から価額を予測します。正しくは、路線価を調べたり、固定資産税の納付書(納税通知書あるいは納付書兼領収証書)があれば、その評価額の1.25倍を目安として、評価します。

参考として不動産の概算評価では、より正しく評価できる順から並べてみると次のような方法があります。

①路線価図で所在を確認し、路線価を乗じておおよその評価額を算出する。
②固定資産税評価額を参考に、その額の1.25倍を目安とする。
③相談者の聞いている相場の金額を参考にする

建物の価額は固定資産税評価額を用いますが、評価額がわからなければ、建築費や築年数から推測します。次に金融資産は単純にいくらぐらいお持ちであったかお聞きし、その金額と不動産の評価とを足して、財産額の合計額を推測します。それ以外の要素として、被相続人からの3年以内の贈与がないか、あるいは家族名義等の預金がないかなどお尋ねします。

このような質問をもとにざっとした概算による財産の合計額から、法定相続人の数を参考に基礎控除額と比較して、次のいずれに当てはまるか、それによって各々の答え方をしています。

①財産の合計額が基礎控除を完全に下回ると予想される場合
 税金に関して(あるいは税務署に対して)一切の手続きは不要です。
②財産の合計額が基礎控除額の前後と推測される場合
 申告が必要かどうかをきちんとみなければならないため、税理士に相談して相続税の申告が必要かどうかを確認する必要が有ります。
➂財産の合計額が基礎控除を完全に上回ると予想される場合
 相続税の申告や納税が必要と考えられるため、税理士に申告の依頼をしてもらいます。

 相続税の申告に関して、相続人自身で申告書を作成できないかというご相談がありますが、基本的に、間違いのない申告書を作成することは困難だと申し上げています。仮に作成することが出来たとしても、財産債務の内容やその評価において多数の誤りが生じ、結果的に、過大もしくは過小に、申告されていることと思います。それでも良ければ、可能といえますが、適正な申告はもちろんのこと、相続に関するアドバイスも含め依頼される方が良いのではと思います。