民法改正 相続人以外の親族の寄与分(2018/09/01)

 従来、寄与分制度は相続人においてのみ認められており、相続人以外の者(例えば、相続人の配偶者)にはありませんでした。今回、相続人以外の者でも認められる特別の寄与分が制度化されることになりました。

1.親族の特別の寄与分とは
 被相続人に対して無償で療養看護そのほかの労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持または増加について特別の寄与をした被相続人の親族(相続人、相続の放棄をした者及び欠格、または廃除によってその相続権を失った者を除きます。これを「特別寄与者」といいます。)は、相続の開始後、相続人に対し、特別寄与者の寄与に応じた額の金銭の支払いを請求することができます。

 この特別寄与料の支払いについて、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、特別寄与者は、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができます。家庭裁判所は、寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して特別寄与料の額を定めます。

2.請求期間
 この特別の寄与は特別寄与者が相続の開始及び相続人を知った時から6か月以内、又は相続開始の時から1年以内に請求しなければなりません。この点、期間の制限に注意する必要があります。

3.相続人の寄与分との相違
 相続人にも寄与分が認められていますが、これは、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持または増加につき特別の寄与をした場合となっています。

民法改正 配偶者の自宅の持戻しの免除(2018/08/31)

夫婦間での居住用不動産の持ち戻しの免除

 居住用不動産について、配偶者に生前贈与か遺贈した場合には、相続の際に特別受益として持ち戻しを行わないこととされます。(2019年1月13日までに施行予定)

1.特別受益者の相続分
 相続人のうち、被相続人から遺贈を受け、又は婚姻もしくは養子縁組のためもしくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、法定相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分としています。

2.特別受益の持ち戻しの免除
被相続人がこの遺贈又は贈与の価額を加えないとする意思を表示したときは、その意思に従い、相続財産に加えないこととされます。

3.居住用不動産の持ち戻しの免除
婚姻期間が20年以上の夫婦の一方である被相続人が、他の一方に対し、その居住の用に供する建物又はその敷地について遺贈又は贈与した時は、その被相続人は、その遺贈又は贈与について特別受益の持ち戻しの適用をしない旨の意思表示をしたものとされます。
その結果、配偶者の相続分が、従前は自宅不動産の持戻しにより、金融資産等の他の財産の相続分が減少しましたものが、改正後は持戻しがないことにより、金融資産等の相続分が増すことになり、配偶者の生活の安定が図られるようになります。

イラスト:居住用不動産の持ち戻しの免除 改正前

改正前

イラスト:居住用不動産の持ち戻しの免除 改正後

改正後

このように、改正後は配偶者の金融資産等の相続分が増すことになります。

民法改正 配偶者の居住権(2018/08/19)

配偶者居住権及び配偶者短期居住権の創設

 被相続人の配偶者の相続後の自宅に住む権利として、新たに居住権が2年以内に設けられることになりました。その内容は次のようなものです。

1.配偶者居住権

(1)配偶者居住権とは

 被相続人の配偶者は、被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に居住していた場合において、遺産の分割によって配偶者居住権を取得したときや遺言で指定されていたときは、その居住していた建物(以下、「居住建物」という。)の全部について無償で使用及び収益をする権利(以下、「配偶者居住権」という。)を取得します。

 この配偶者居住権の存続期間は、配偶者の終身の間です。ただし、遺産の分割の協議もしくは遺言に別段の定めがあるとき、又は家庭裁判所が遺産の分割の審判において別段の定めをしたときは、その定めによります。

 また、この配偶者居住権について遺言で特別受益の持戻しの対象としないこと(遺産分割上、相続分に関係させないこと)ができます。

 ただし、被相続人が相続開始の時に居住建物を配偶者以外の者と共有していた場合においては、この配偶者居住権は適用されないことになっています。

(2)配偶者居住権の登記

 居住建物の所有者は、配偶者居住権を取得した配偶者に対し、配偶者居住権の設定の登記を備えさせる義務を負います。

2.配偶者短期居住権

(1)配偶者短期居住権とは

 配偶者は、被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に無償で居住していた場合には、配偶者を含む共同相続人間で遺産の分割をすべき場合においては、遺産の分割により居住建物の帰属が確定した日又は相続開始の時から6か月を経過する日のいずれか遅い日までの間、その居住していた建物(以下、「居住建物」といいます。)の所有権を相続又は遺贈により取得した者に対し、居住建物について無償で使用する権利(居住建物の一部のみを無償で使用していた場合にあっては、その部分について無償で使用する権利。以下、「配偶者短期居住権」という。)を有します。

 ただし、配偶者が相続開始の時において居住建物に係る配偶者居住権を取得したときや欠格又は廃除によってその相続権を失ったときは、その権利はなくなります。

 一方、相続又は遺贈により居住建物を取得した者は、遺産分割協議によらない場合に、いつでも配偶者短期居住権の消滅の申入れをすることができます。この場合の配偶者の「配偶者短期居住権」はこの申入れの日から6か月を経過する日までとなります。

 この配偶者短期居住権がある場合においては、相続又は遺贈により居住建物を取得した者は、第三者に対する居住建物の譲渡その他の方法により配偶者の居住建物の使用を妨げてはなりません。

民法改正 新しい法務局での遺言書の保管の制度(2018/08/13)

新しい法務局での遺言書の保管の制度

 民法改正に伴い新たに2年以内に法務局での自筆証書遺言の保管ができるようになります。この法務局での保管の制度は以下のような内容です。

1.遺言書の保管の申請

 遺言者は、遺言者の住所地もしくは本籍地又は遺言者が所有する不動産の所在地を管轄する法務局の遺言書保管所の遺言書保管官に対し、遺言書の保管の申請をすることができます。

 この場合の遺言書は一定の様式に従って作成した無封のもので、その申請書に遺言書の作成の年月日、遺言者の氏名、出生の年月日、住所及び本籍、受遺者や遺言執行者の氏名又は名称及び住所等を記載し、それらを証明する書類を添付して、自ら出頭して申請を行います。

 遺言書保管官は、遺言書の保管の申請があった場合において、その申請人が本人であるかどうかの確認をするため、一定の書類の提示又は提出を求めます。

2.遺言書の保管と閲覧、撤回

 遺言書は、遺言書保管所において保管されます。また、遺言者は、その申請に係る遺言書が保管されている遺言書保管所(以下、「特定遺言書保管所」といいます)の遺言書保管官に対し、いつでもその遺言書の閲覧又は申請の撤回を請求することができます。

3.遺言書に係る情報の管理

 遺言書に係る情報の管理は、磁気ディスク(これに準ずる方法により一定の事項を確実に記録することができる物を含む)をもって調製する遺言書保管ファイルに、次に掲げる事項を記録することになります。

  1. 遺言書の画像情報
  2. 遺言書の作成の年月日、遺言者の氏名、出生の年月日、住所及び本籍、遺言書に記載された受遺者、遺言執行者他
  3. 遺言書の保管を開始した年月日
  4. 遺言書が保管されている遺言書保管所の名称及び保管番号
4.遺言書情報証明書の交付等

 遺言者の相続人、受遺者又は遺言執行者等は(以下、「関係相続人等」という)は、遺言者が死亡している場合において、遺言書保管官に対し、遺言書保管所に保管されている遺言書について、遺言書保管ファイルに記録されている事項を証明した書面(以下、「遺言者情報証明書」という。)の交付を請求することができます。

 この「遺言書情報証明書」の請求は、自己が関係相続人等に該当する遺言書(以下、「関係遺言書」という。)を現に保管する遺言書保管所以外の遺言書保管所の遺言書保管官に対してもできます。一方、遺言書保管官は、請求により遺言書情報証明書を交付し、又は関係遺言書の閲覧をさせたときは、速やかに、その関係遺言書を保管している旨を遺言書の相続人並びに受遺者及び遺言執行者に通知します。

5.遺言書保管事実証明書の交付

 また、誰でも遺言書保管官に対し、遺言書保管所における関係遺言書の保管の有無や記録されている遺言書の作成の年月日及び遺言書保管所の名称及び保管番号を証明した書面(以下、「遺言書保管事実証明書」という。)の交付を請求することができます。

6.遺言書の検認の適用除外

 家庭裁判所における遺言書の検認手続きは、この遺言書保管所に保管されている遺言書については必要ありません。

民法改正 遺言書に自筆でない目録の添付が可能に(2018/08/03)

自筆証書遺言の自筆でない目録の利用

 民法の改正で来年1月から自筆証書遺言の作成の方法が変わります。その改正後の自筆証書遺言の内容をご紹介します。

1.自筆証書遺言書の自書押印

 自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならないことになっています。(ここは従前と同じ)

2.目録を添付すれば、目録は自書でなくても良い

 自筆証書にこれと一体のものとして相続財産の全部又は一部の目録を添付する場合には、その目録については自書することを要しないことになりました。ただし、この場合には、その目録の全ページ(両面ある場合にあっては、その両面)に署名し、印を押さなければならないという条件がつきます。

 また、自筆証書遺言について加除そのほかの変更は、遺言者がその場所を指示し、これを変更の場所に印を押さないと効力が生じない点は目録についても同様となっています。

3.財産目録

 この目録ですが、第三者が作成したものやパソコンで作成したもの、不動産の登記簿謄本の写し、通帳の写し等を利用することが考えられます。

4.目録添付による遺言書のスタイル

 この新しいスタイルの遺言書として、次のような本文と目録を綴じた組み合わせによる遺言書が普及することが考えられます。

<本文>

私、安東信裕は次のように遺言します。
1 妻安東花子には、別紙1の財産を相続させる。
2 長男安東一郎には、別紙2の財産を相続させる。
3 長女安東恵には、別紙3の財産を相続させる。
4 上記記載以外の一切の財産は妻安東花子に相続させる。

  平成○○年〇月〇日
    遺言者 安東 信裕 印

<別紙1>

不動産の登記簿謄本のコピー

(上部に「別紙1」、下部に「安東信裕 印」と記載。)

<別紙2>

〇〇銀行の通帳のコピー

(上部に「別紙2」、下部に「安東信裕 印」と記載。)

<別紙3>

△△証券のコピー

(上部に「別紙3」、下部に「安東信裕 印」と記載。)